ブラフマーとは?インド神話の創造神とその信仰
ブラフマーはインド神話における宇宙の創造神であり、ヒンドゥー教の三大神「トリムルティ」(ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァ)の一柱です。他の神々と比べるとその信仰は限られていますが、ブラフマーは宇宙の起源と創造を象徴する重要な存在です。本記事では、ブラフマーの役割や起源、信仰の現状、そして彼を祀る聖地プシュカルについて詳しく解説します。
ブラフマーの起源と象徴
ブラフマーは、インド神話で宇宙の卵(ヒラニヤガルバ)から生まれたとされています。この卵が割れ、宇宙が誕生した際にブラフマーが創造者としての役割を担ったとされます。彼は四つの顔を持ち、宇宙の四方を見渡す象徴として描かれ、四本の腕には以下のような神聖なアイテムを持ちます。
- ヴェーダ:知識の象徴
- 蓮の花:純粋さと創造
- 水壺:命の源
- 数珠:瞑想と時間の循環
ブラフマーの乗り物は白鳥(ハンサ)で、知識と識別力の象徴とされています。
現在のブラフマー信仰
ブラフマーは、ヒンドゥー教の他の神々(特にヴィシュヌとシヴァ)に比べて信仰の対象となることが少なく、寺院も非常に限られています。これはブラフマーにまつわる神話に起因しており、一説では彼が重要な儀式において失態を犯したため、他の神々から罰を受けて信仰が減少したとされています。
プシュカルのブラフマー寺院
インドで唯一ブラフマーを主神として祀るのが、ラージャスターン州プシュカルにあるブラフマー寺院です。この寺院は、14世紀に建てられたとされ、現在も巡礼者が訪れる重要な聖地です。プシュカルには、ブラフマーにまつわる次のような伝説があります。
ブラフマーが悪魔を討つために蓮の花を投げ、その花が落ちた場所に聖なる湖「プシュカル湖」が現れたとされます。この湖は浄化の儀式が行われる場所として非常に重要視されています。
プシュカル・メーラ:ブラフマーを讃える祭り
毎年11月、プシュカルではプシュカル・メーラ(Pushkar Mela)という祭りが開催されます。この祭りはラクダ市として始まりましたが、現在ではブラフマー寺院での祈りやプシュカル湖での沐浴が行われる宗教的行事としても知られています。特にヒンドゥー暦のカルティック月(8月目)の満月の日には、全国から巡礼者が集まり、ブラフマーに祈りを捧げます。
日本での梵天信仰
ブラフマーは日本では梵天として仏教を通じて伝えられました。仏教では、梵天は釈迦が悟りを開いた後に教えを広めるよう促した守護神として描かれます。日本の密教寺院では、梵天は「帝釈天」とともに仏教を守護する存在として信仰され、梵天勧請の説話が仏教文化に根付いています。
まとめ
ブラフマーはインド神話における創造神として、宇宙や知識の象徴となる重要な存在です。信仰の対象としての規模は限られていますが、プシュカルの寺院や祭りを通じて、その役割や意義が現代まで受け継がれています。また、日本では仏教を通じて「梵天」として独自の文化的な解釈が加えられ、精神性や守護の象徴として重要な役割を果たしています。
ブラフマーにまつわるインドと日本の信仰を知ることで、異なる文化の中での創造神の存在意義を感じ取ることができるでしょう。
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